「幸福学」というものがあるらしい。
慶應義塾大学大学院、前野教授の研究だ。
彼はアンケート調査により、幸福の因子を4つにまで絞り込んだとする。
その幸福の4因子は以下の通り。
- 自己実現と成長の因子(やってみよう因子)
- 繋がりと感謝の因子(ありがとう因子)
- 前向きと楽観の因子(なんとかなる因子)
- 独立と自分らしさの因子(ありのまま因子)
このままでは何の事かまるでわからないので、それぞれを解説していこう。
- やってみよう因子
大きな目標と目前の目標が一致し、そのために学習・成長しようとする因子。
幸福感は挑戦する時に感じやすく、一方で現状維持しようとした時には抑うつ感情が芽生えやすい。これは不安を司る脳の扁桃体の反応による。 - ありがとう因子
人を喜ばせる・愛情・感謝・親切という他者との安定性を目指す因子。
感謝はセロトニンの分泌を促す。セロトニンは幸福感を持続させる脳内ホルモン。粘り強さにもつながるため、感謝のプロセスはスポーツ心理学でも取り入れられている。 - なんとかなる因子
失敗や不安を引きずらず、未来を前向きに捉えようという因子。
楽観性は同じくセロトニン及び扁桃体と関わりがあると言われる。楽観性・悲観性は外部の環境で大きく影響を受けるという研究があり、自らの意思でコントロールできる性質のひとつとされる。一方で、悲観的な人間のほうが向いている職業(パイロット・外科医など)もあるという研究もある。 - ありのまま因子
自分を強く持ち他と比較せず、人目を気にせずマイペースでいようという因子。
自分らしく生きることはストレスを減らす。人間の脳の機能は遺伝的多様性が激しく、画一的に生きることには向いていないからだ(逆に言うと、日本人が多様な人種の国と比べて画一的になりやすいのは、遺伝的多様性が少ないからとも言える)。
以上が前野教授による幸福を作る大きな4つの要因。
当然、他にも幸福を作る要因はある。
大別するとこの4つが目立つ、というのが前野教授の主張。
100人ほどのアンケートから導き出したという母数の少ない研究ながら、一応は現代レベルの脳科学的では、それなりに正しいように見える。
減るものではなし、この4因子を意識して生活してみてほしい。
あるいは、そこにあなたの幸福があるのかもしれない。
そもそも幸福とは極論、脳内物質の作り出す形のない虚像である。
実態が伴わなくとも、こうした「思い込み」で幸せになれることもあるだろう。
例えば、世界一幸せな国「といわれていた」ブータンの話はご存知だろうか。
国連の世界幸福度ランキングで発展途上国としては最高の世界8位に位置していた国。
「雨風をしのげる家があり、食べるものがあり、家族がいるから幸せだ」と国民が答える、穏やかな国として紹介されていた。
「足るを知る」そのものの国だった。
しかし2019年の調査では95位に急落。
以降はランキングに載ることもなくなった。
その原因は、実にインターネットの普及にあったとされる。
ブータン国民はインターネットを通じ、発展途上国である自らの暮らしと、他の国、特に先進国の人々の暮らしを比べるようになってしまったのだ。
「ブータンのために」と海外からの支援を受けての経済の発展・インフラの充実が、皮肉にも彼らの幸福を徹底的に破壊したのだ。
それも、ほんの1年もかからずに!
幸福とは、そんなものなのである。
だからといって発展前のブータンに倣い、情報を遮断して外には目を瞑って生きようとは言わない。
それでは典型的なカルト宗教のやり口だ。
しかしながら幸福とはあくまで脳の働きにすぎず、誤解を恐れずに言えば気の持ちようが全てだと、強く意識する必要があるようには思われないか。
幸福は、常にあなたの傍にある。